2010年7月19日月曜日

アラスカへの憧れ

先日、古本屋で、星野道夫の『魔法のことば』という講演集を手に入れた。これが、本当にいい。本から風が吹いてくるという体験だろうか。アラスカの自然が、匂いと温度と、光線を具えて、伝わってくるのである。語りの持つ効力が、たしかに、この本には生きている。

星野さんは、大学生の時に一枚の写真と出会い、アラスカへの憧れを掻き立てられたという。それはアラスカの小さな村が映っている、夕暮れ時を捉えた航空写真だった。


自分にも、大きなものへの憧れがあり、それがきっかけで、ヒマラヤ山脈を見に行ったのが、リュックを背負って海外に出た初めての旅だった。数週かけて、ランタン渓谷を歩き、5000M登った時に、氷河があった。あのときに感じた世界というのが、自分を旅する人に変えたと思う。そこに暮らす人がいて、牛が歩いている。零下の世界で、空気は氷の結晶になる。あのとき撮った写真は、今でも手元にあるのだけど見返すことはほとんどない。眼に焼き付いているからである。

アラスカには夜がなくなる季節があり、また太陽が沈まない季節がある。それは、一体どんな世界なのだろうか。そこで思索した、ひとりの思想家として、星野さんのことばには、染みわたって来る広さと響きがある。

『日々の暮らしに追われている時、もうひとつの別の時間が流れている。それを悠久の自然と言ってもいいだろう。そのことを知ることができたなら、いや想像でも心の片隅に意識することができたなら、それは生きてゆくうえでひとつの力になるような気がするのだ』(長い旅の途上より)

いつか、オーロラに出会うことを夢見て、生きる。


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